ノート
叢生を非抜歯矯正で
治療した症例
主訴と実際の症状、治療内容についての概要
患者さんは20代の女性です。歯のでこぼこ(叢生)が気になるということで来院されました。
上顎より下顎の歯列の乱れが大きく、部分的に反対咬合が生じ、うまく噛み合わない箇所も見られました。
治療は裏側に装置をつける舌側矯正で行い、非抜歯で部分的にIPRを行い歯を整列させるスペースを作りました。
写真で見る矯正治療の経過
精密検査と診断について
叢生のため、右側の上下犬歯の前後関係が逆に(写真青丸1)なっています。また、下顎の前歯部分が凸凹により歯列の内側に入り込み(写真青丸2)、結果として噛み合わせが深くなっていました。
審美的な問題とともに、噛み合わせを整え、歯の機能面の問題を解決する必要がありました。
精密検査と模型でのシミュレーションの結果、この方の症状の場合、非抜歯にて治療ができると判断しました。
歯と歯の接触面を削って隙間を作るIPR(アイピーアール)という処置を部分的に行い、歯は抜かずに歯列を整列させます。
矯正治療のポイント
治療経過
この方の場合、噛み合わせを整えるため、一時的に噛み合わせを高くする「バイトアップ」を行う必要がありました。
写真中、大臼歯部に付いている青い素材は歯科用のレジンで、噛み合わせの高さを高くするために盛ってあります。こちらは治療の途中で除去します。
写真の上下を見比べると、バイトアップを行うと、噛み合わせの高さが高くなるのが分かります。
一時的に噛みにくくなることはありますが、治療が進むにつれ噛み合わせが整います。
治療を終えて
治療後は歯並びが整いました。また、噛み合わせが整ったことで、口元の歪みが解消されています。
下顎の歯並びの治療前と治療後の比較です。前歯部分の歯並びが整い、歯と歯の重なりが無くなったため、歯磨きもしやすくなります。
矯正治療は見た目でだけでなく、今後の歯の健康にも関わる治療だということを実感いただけるかと思います。
歯並びがデコボコして見える「叢生」でお悩みだった患者さまですが、裏側に装置をつけて約1年で、歯並び・噛み合わせともにきれいに整いました。
歯並びだけでなく、噛み合わせもしっかりと整えることで、矯正後の口元もバランスが良く健康的な印象となりました。
これも治療にご協力いただいたおかげです。
長期間の矯正治療、お疲れ様でした。今後も定期検診等で何かご不安があればご相談ください。
治療詳細
- 治療内容
- マルチリンガルブラケットを用いた上下舌側矯正
- 治療期間
- 予定治療期間:1年
- 費用
- 治療完了までの総額:1,320,000円(税込)
(精密検査費用・矯正装置代・通院費用を含む)
※掲載している費用は治療当時のもので現在の治療費用とは異なります。 - リスク・副作用
矯正装置による不快感、痛み(疼痛)
矯正装置の不快感や痛みを感じる期間は人それぞれで、処置の内容によっても変変化しますが、一般的に、矯正装置を装着してから2〜3週間ほどで装置がお口の中にあることに慣れてくるようになります。
また、歯が動く際の痛みは感じ初めて1日〜2日ほどで収まることが多いと言われています。
治療期間の延長
歯の動き方には個人差があり、診断時に予測した治療期間を超える可能性があります。また、マウスピース等の矯正装置やエラスティック(顎間ゴム)の装着時間が足りない場合にも治療期間が延長される場合があります。
虫歯や歯周組織の炎症
矯正装置を装着している間は、丁寧な歯磨きが必要となります。歯の清掃が不十分ですと虫歯や歯周病にかかりやすくなります。歯のみがき方指導を行いますので、歯みがきを徹底し、矯正治療中も口腔内を清潔に保つようにしてください。
歯根吸収
矯正歯科治療中、歯根が歯の土台(歯槽骨)に吸収されていき、短くなることを歯根吸収(しこんきゅうしゅう)と呼びます。矯正治療において歯を無駄に動かしたり、強すぎる矯正力をかけてしまう場合に、歯根吸収を引き起こす可能性があります。
歯肉退縮
歯茎が下がり、歯の根元が露出するようになることを歯肉退縮(しにくたいしゅく)と呼びます。矯正治療ほか、強すぎるブラッシングなどでも生じます。歯根が露出すると、知覚過敏を引き起こし、虫歯・歯周病にもなりやすくなるほか、審美面でも問題となります。
矯正治療において歯の動かせる範囲は、歯槽骨のある部分だと決まっており、歯槽骨から歯が外れていった場合、歯肉退縮が生じることがあります。
また、矯正力が強すぎた場合、歯槽骨が吸収され歯茎が下がることでも歯肉退縮は起こります。
骨の減少
歯を支える骨や歯肉がすでに不健康な状態
エナメルクラック
装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
後戻り
矯正歯科治療が終了した直後は、歯は不安定で動きやすい状態にあります。矯正後の歯を安定させるため、リテーナー(保定装置)の装着をお願いしています。リテーナーを指示通り使用しない場合、歯並び・噛み合わせが再び乱れてくる「後戻り」を引き起こすことがあります。
装置の破損、脱落
矯正装置は小さな部品から成り立っており、何らかの衝撃により外れた場合、矯正装置を誤飲する可能性がありますのでお気をつけください。装置のゆるみ、浮き、ぐらつきなどを感じた場合には早めにご相談ください。
装置による口腔内の炎症
ゆるんだり破損した装置によって、または口をぶつけたりすることによって、頬や唇が傷ついたり炎症を起こすことがあります。
顎関節に対する影響
矯正治療中、一時的な噛み合わせが顎関節に影響を及ぼし、顎の痛み、開口障害などを引き起こすことがあります。
アレルギー
装置の種類、材質はそれぞれ異なりますが、装置に対してアレルギー反応を起こす場合があります。金属アレルギーやラテックスアレルギー等、事前に確認いたしますが、治療中に反応が出た場合、装置を変更したり、治療を中止することがあります。
歯の癒着
ごく稀に、歯が生える過程で歯と歯が癒着すること(癒合歯 / ゆごうし)、強い衝撃などにより歯と歯槽骨とが癒着していること(アンキローシス)があります。癒着した歯に対してむやみに矯正力を加えても歯の移動は難しく、治療前の検査にてよく確認する必要があります。
治療済みの歯に対して
歯に被せ物などの大きな修復物が装着されていると、神経に影響が生じることもあります。また、矯正治療後、かぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などを 治療後の噛み合わせに合わせてやり直す必要がでてくる場合があります。
- 治療担当
- 小川理絵