ノート
抜歯なしで出っ歯と叢生を
裏側タイプの舌側矯正で改善


主訴と実際の症状、治療内容についての概要
患者さんは20代の女性です。上下前歯の突出感と凹凸が気になるということで相談にこられました。
特に上の前歯部分が水平方向に斜めになっており、機能面・審美面の両方においてお悩みの様子でした。
歯列の奥に歯を後退させる余裕(スペース)があったため、抜歯を行わず、カリエールを用いて上顎の遠心移動(歯列を全体的に下げる)矯正治療を行なっていきました。
写真で見る矯正治療の経過
精密検査と診断について

こちらは検査時の写真です。凸凹はそれほど大きくないように見えますが、前歯部分が斜めに傾いています。

また、横から歯列を見ると、前歯部が前方に傾いているのがわかります。
精密検査の結果、この患者さんは、歯列の奥部分にまだ歯を動かせるスペースがあったので、抜歯は行わず、上顎の歯列全体を後退させる治療を行うことにしました。
治療を終えて
治療経過

矯正開始後半年ほどで歯科矯正用アタッチメント(カリエール)という装置を使用しました。
歯科矯正用アタッチメント(カリエール)は犬歯から後ろの臼歯部分を効果的に後退させることのできる装置です。
通常の矯正装置では、奥歯部分を含め歯列を全体的に後退させていくのは難しく、時間のかかる治療ですが、歯科矯正用アタッチメント(カリエール)を用いることで、効果的に後退させることができ、かつ治療期間の短縮にもつながります。
写真では約3カ月半ほどで上の歯列が動き、噛み合わせが改善されていることがわかります。
治療結果


前歯部分の突出に加え、叢生の影響もあって、上の前歯と下の前歯の前後関係(オーバージェット)に大きな隔たりがありました。
上の前歯と下の前歯の前後での隙間が大きいと、咀嚼などの機能面でも問題を感じやすくなります。
今回の矯正治療では、奥歯部分の噛み合わせと合わせて、前歯部分のジェットもかなり改善されました。

検査時と矯正治療完了直前(2024/11/16)の口元の様子です。
矯正治療用のボタンがまだついていますが、上下の叢生、突出感が改善され、全体的に整った印象となりました。
約一年半の矯正治療、おつかれさまでした。
治療に積極的に協力いただき、またカリエールを用いての治療が可能だったため、抜歯をすることなく矯正治療を行うことができました。
噛み合わせも大きく変わりましたので、今後定期検査で不調や後戻りがないか気をつけて見ていきます。
治療詳細
- 治療方法
- マルチリンガルブラケットを用いた舌側(裏側)矯正
アンカースクリュー無し、非抜歯、カリエール装着 - 治療内容
- 上顎遠心移動、上下顎前歯叢生の改善、前歯のオーバージェット改善
- 治療期間
- 2023年6月(装置装着)~2024年12月(終了)
- 費用
- 精密検査費用:38,500円(税込)
治療完了までの総額:1,320,000円(税込)
(矯正装置代・通院費用を含む)
※掲載している費用は治療当時のもので現在の治療費用とは異なります。 - リスク・副作用
矯正装置による不快感、痛み(疼痛)
矯正装置の不快感や痛みを感じる期間は人それぞれで、処置の内容によっても変変化しますが、一般的に、矯正装置を装着してから2〜3週間ほどで装置がお口の中にあることに慣れてくるようになります。
また、歯が動く際の痛みは感じ初めて1日〜2日ほどで収まることが多いと言われています。
治療期間の延長
歯の動き方には個人差があり、診断時に予測した治療期間を超える可能性があります。また、マウスピース等の矯正装置やエラスティック(顎間ゴム)の装着時間が足りない場合にも治療期間が延長される場合があります。
虫歯や歯周組織の炎症
矯正装置を装着している間は、丁寧な歯磨きが必要となります。歯の清掃が不十分ですと虫歯や歯周病にかかりやすくなります。歯のみがき方指導を行いますので、歯みがきを徹底し、矯正治療中も口腔内を清潔に保つようにしてください。
歯根吸収
矯正歯科治療中、歯根が歯の土台(歯槽骨)に吸収されていき、短くなることを歯根吸収(しこんきゅうしゅう)と呼びます。矯正治療において歯を無駄に動かしたり、強すぎる矯正力をかけてしまう場合に、歯根吸収を引き起こす可能性があります。
歯肉退縮
歯茎が下がり、歯の根元が露出するようになることを歯肉退縮(しにくたいしゅく)と呼びます。矯正治療ほか、強すぎるブラッシングなどでも生じます。歯根が露出すると、知覚過敏を引き起こし、虫歯・歯周病にもなりやすくなるほか、審美面でも問題となります。
矯正治療において歯の動かせる範囲は、歯槽骨のある部分だと決まっており、歯槽骨から歯が外れていった場合、歯肉退縮が生じることがあります。
また、矯正力が強すぎた場合、歯槽骨が吸収され歯茎が下がることでも歯肉退縮は起こります。
骨の減少
歯を支える骨や歯肉がすでに不健康な状態
エナメルクラック
装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
後戻り
矯正歯科治療が終了した直後は、歯は不安定で動きやすい状態にあります。矯正後の歯を安定させるため、リテーナー(保定装置)の装着をお願いしています。リテーナーを指示通り使用しない場合、歯並び・噛み合わせが再び乱れてくる「後戻り」を引き起こすことがあります。
装置の破損、脱落
矯正装置は小さな部品から成り立っており、何らかの衝撃により外れた場合、矯正装置を誤飲する可能性がありますのでお気をつけください。装置のゆるみ、浮き、ぐらつきなどを感じた場合には早めにご相談ください。
装置による口腔内の炎症
ゆるんだり破損した装置によって、または口をぶつけたりすることによって、頬や唇が傷ついたり炎症を起こすことがあります。
顎関節に対する影響
矯正治療中、一時的な噛み合わせが顎関節に影響を及ぼし、顎の痛み、開口障害などを引き起こすことがあります。
アレルギー
装置の種類、材質はそれぞれ異なりますが、装置に対してアレルギー反応を起こす場合があります。金属アレルギーやラテックスアレルギー等、事前に確認いたしますが、治療中に反応が出た場合、装置を変更したり、治療を中止することがあります。
歯の癒着
ごく稀に、歯が生える過程で歯と歯が癒着すること(癒合歯 / ゆごうし)、強い衝撃などにより歯と歯槽骨とが癒着していること(アンキローシス)があります。癒着した歯に対してむやみに矯正力を加えても歯の移動は難しく、治療前の検査にてよく確認する必要があります。
治療済みの歯に対して
歯に被せ物などの大きな修復物が装着されていると、神経に影響が生じることもあります。また、矯正治療後、かぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などを 治療後の噛み合わせに合わせてやり直す必要がでてくる場合があります。
- 治療担当
- 小川理絵