セラミック矯正とは?
「セラミック矯正」と呼ばれている治療方法があります。歯を削り被せ物によって歯並びをよくみせる方法で、一般的に矯正学で定義する歯列矯正ではありません。
歯の向きや大きさを被せ物だけでなかば強制的に変えるため、治療後のトラブルも多く、積極的にお勧めできる治療ではありません。
セラミック矯正と矯正治療の違い
セラミック矯正とはセラミックの被せ物を使って、前歯部分の歯並びを整えたように見せる治療で、「矯正」と呼ばれていますが、矯正装置を用いることはなく、歯列矯正とは異なる治療方法です。
セラミック矯正
- 治療方法
- 前歯(天然歯)を大きく削り、セラミックの被せ物を被せる。
- 治療期間
- 数ヶ月と治療期間が短い。多くが3カ月程度。
- 費用
- 使用する素材や設置する本数によって異なる。前歯部分の上6本下6本を対象にする場合には矯正治療よりも高くなる場合がほとんど。
- 特徴
- セラミックは色を細かく指定でき、理想的なきれいな歯にできる。
- どこで治療する?
- 矯正歯科というより、審美治療を扱っている歯科や美容整形外科でサービスとして提供している場合が多い。
矯正治療
- 治療方法
- ワイヤーやマウスピースなどの矯正装置を長期間歯に設置して「歯自体」を動かしていく。
- 治療期間
- 症例によるが、多くの場合2年程度かかる。
- 費用
- ワイヤー矯正かマウスピース型矯正かといった矯正方法によって費用は異なる。新宿南口矯正歯科の矯正料金
- 特徴
- 見た目だけでなく、噛み合わせなどの機能面も改善する。
メンテナンスも重要だが、治療完了後の歯並びは永続的に維持することができる。 - どこで治療する?
- 矯正専門歯科や矯正治療を扱う歯科。
セラミック矯正の問題点
セラミックを用いた治療は、本来であれば歯自体の問題に対する解決方法のひとつです。
虫歯や歯周病、怪我などによって歯が欠けた・折れたといった場合や、歯の大きさや色の問題で患者さんが悩まれている場合に、機能面や審美面を改善するために行われるのが、セラミックなどを用いた補綴(ほてつ)治療です。
セラミックを用いた補綴治療自体が悪いものではないのですが、「セラミック"矯正"」とうたった治療では、歯自体に問題が無いにもかかわらず、健康な歯を削り、前歯部分をセラミックのクラウンに置き換えることで歯列が整ったように見せます。
セラミック矯正の問題点
- 健康な自分の歯を大きく削ることになる。
- 出っ歯傾向にある場合、歯の向きを変えるために大きく削ることとなり、神経を抜く必要がでてくる。
- 神経を抜いた歯の寿命は縮む。
- 大きく削ったために、後日歯髄が壊死し、被せ物の下の見えない部分で炎症を起こすこともある。
- セラミックは経年劣化する上、加齢とともに歯茎も痩せてくるため、審美性を保つためにはメンテナンスや付け替えが必要。
- 本来の歯の軸と被せ物の方向が大きく異なる場合、被せ物が割れやすい、歯への負担が増えるなどの問題もある。
質を重視したセラミック治療は
それなりに時間がかかります
安くて早い、と人気が出ているセラミック矯正ですが、治療スピードの速さばかりをうたう治療は、噛み合わせなどの健康面への配慮が足りなかったり、仕上がりがよくなかったり、という可能性があります。
本来のセラミック治療は、検査・歯科治療(適切な根管治療など)・支台歯形成・型取り・模型や仮歯(プロビジョナル)の製作と噛み合わせや歯茎など歯周組織との調和の確認を行った上で、セラミックの補綴物を作りお口の中に設置します。
工程が多く、歯科医と歯科技工士の技術と互いの協力で成り立つ治療です。
近年では、口腔内スキャナーや、CAD/CAMといったデジタル技術の登場により、「1日で〜」という広告も目にしますが、はやさと引き換えにリスクが潜んでいることも患者さんは知る必要があります。
歯の向きや噛み合わせを考慮しているか
前歯の部分は目立つため、とにかく見た目だけ早く直したい、という気持ちもわかります。
でも、前歯部分は見た目だけでなく、歯や噛み合わせの機能面でも重要な役割を果たしていることをご存知でしょうか?
アンテリアガイダンスについて
前歯はものを噛み切る役割を持っていますが、その他、顎を開閉する際に正しい動きをするよう誘導するガイドの役割も持っています。
このガイド機能のことを、専門的にはアンテリアガイダンス(Anterior guidance)と呼びます。
上下の前歯同士が正しい位置関係で噛み合っていることが大切なのですが、アンテリアガイダンスがあることで奥歯や顎関節への負担が軽減され、歯列全体の寿命にも関わる重要な機能です。
上顎前突(出っ歯)や過蓋咬合・開咬の方はこのアンテリアガイダンスが適切に機能していないため、矯正治療では、その点も重要な改善ポイントとなります。ですが、噛み合わせの問題は歯列全体の問題であり、前歯だけが対象のセラミック矯正ではその点の改善が難しいこともあります。
噛み合わせが悪いとはどういうこと?
セラミック矯正では歯の傾きを大きく変えることが難しい
セラミック矯正では、歯の根の向きまで変えることはできませんので、出っ歯傾向にある方がセラミック矯正を行う際には、歯の向きを変えるため、大きく歯を削る必要があります。
この際、神経は抜く必要が出てくることが多いです。
また、歯の根の向きに対して、セラミックの歯冠部分が異なる向きでついていることにもリスクが隠れています。
歯は縦方向の圧力には強くできていますが、横方向の力には弱く、負担が重なることで割れるなどのトラブルが生じる可能性もあります。
歯並び・噛み合わせを整えたいなら、歯列矯正を
セラミック矯正を行った後、矯正治療の相談に来られる患者さんもいらっしゃいます。
セラミックの治療は、一見「きれいな歯並びと白い美しい歯」を一度に手にいれることができる理想的な治療のように感じられますが、実際には様々なリスクや問題が存在します。
歯科医の中には、状況が許せば補綴治療のために歯列矯正を行い、その後クラウンなどの設置を行う、丁寧な治療を行う方もいます。矯正治療とセラミックなどを用いる補綴治療はそもそも目的が異なる治療なのです。
歯並びや噛み合わせに問題を感じている場合は、将来的な健康のためにも、歯列矯正治療を考えてみてください。